香り创作技术が鲍齿デザインに革命を起こす:五感を刺激する未来のインタラクション
- 東京科学大学 総合研究院 未来産業技術研究所
特任教授 - 中本 高道
香りは私たちの感覚の中でも、特に記憶や感情に強く影響を与える要素だ。人の思いや場面にふさわしい香りを自由に創り出せれば、より豊かなユーザー体験の実現が可能になるだろう。近年は、生成AIを用いた香り創作技術が注目を集めており、香りの再現や新しい香りの創作をより簡単に行える研究が進んでいる。そうした研究に関わる、東京科学大学 特任教授の中本 高道(なかもと たかみち)氏にお話を伺い、香り創作の背景や生成AIの役割、UX分野における可能性について伺った。

(写真1)東京科学大学 総合研究院 未来産業技術研究所 特任教授 中本 高道氏
生成础滨に命令して香りを作ってもらう
──先生が関わっている、生成系础滨による香り自动创作システムの概要について教えてください。
中本氏:もともとは、香りを再现する研究を行っていました。香りの再现とは、もとになる香りに対して、それと同等、もしくは非常に近い香りを创り出す技术になります。例えば、色を再现する际にはシアン(青緑色)、マゼンタ(赤紫色)、イエロー(黄色)という叁原色を组み合わせるのですが、香りにはそうした基準が确立されていません。そこで、要素臭と呼ばれる香りの成分を使って、その配合比を変えることでさまざまな香りを生成しています。さらに、その延长として香りを创作することを考えました。
──要素臭というのは、どのくらいの种类があるのでしょうか。
中本氏:现在、约200种类弱の香りの中からいくつかの香りを调合して、要素臭を用意しています。香りを再现する际には、対象となる香りに対して质量分析器という测定器を使い、マススペクトル(成分の特徴を示すデータ)を测定します。そのデータをもとに、何种类くらいの要素臭があれば元の香りを再现できるかを判断します。现在、频繁に使用している要素臭は20种类程度ですが、精度と再现のしやすさのバランスを考えながらいろいろと数を调整しています。
一方で、香りの创作に関する研究では、言语表现から意図した香りを作り出すことを目指しています。従来、香りの创作は复数の香りを混ぜて新しい香りを精製する作业を、调香师と呼ばれる専门家が行っていました。调香师は特别な训练を积んでいるのですが、それでも香りを精製する作业は非常に复雑なため、それを生成础滨を使うことでより简単に実现できるようにしたいと考えています。最终的には、例えばスマートスピーカーのようなデバイスに欲しい香りの要素やイメージを言叶で伝えれば、嗅覚ディスプレイと呼ばれる机器で创作した香りを提示します。
──具体的に、香り创りで生成础滨をどう活用されるのでしょうか。
中本氏:生成础滨による香りの创作には、拡散モデルという手法を使っています。まず、マススペクトルのデータとともに香り记述子を入力して新しいマススペクトルを生成させ、「ウッディ」「スパイシー」「フローラル」など香りの特徴を表す言叶を関连づけました。次に生成础滨を使って、例えば「甘い」や「爽やか」といった香りのイメージを表す言叶に対応する香りの、マススペクトルを作りました。それらのデータに基づいて、実际に香りを调合するための精油の种类と、配合割合を数値计算で导き出す仕组みを筑きました。

(図1)生成础滨を活用した香りの生成
(出典:東京科学大学 ホームページ)
香りの特性を生かした新しい分野のコンテンツを开発
──この研究は、どのような分野で役立つのでしょうか。
中本氏:例えば香水以外にも、シャンプーや洗剤、饮料水など、香りが重要になる工业製品が世の中には多々あります。そうした製品の香り付けには、多大なコストと时间をかける必要があるのですが、今はすべての工程を调香师が人手で作业しています。そこを生成础滨に任せれば、开発コストや期间が短缩でき、调香师は最终的な仕上げをする际に香りのアクセントを付けるような作业に専念できます。
食品においても、香りは重要です。特に食べ物に関しては、我々が味と思っているものが、実は匂いであったりすることが结构あるんです。口と鼻はつながっているので、食べものを口にしてもその香りがすぐに鼻に伝わり検知されます。ですので、微妙な食品の违いを出す际にも香りに頼ってることが结构多く、その际の香り付けにも生成础滨による香りの创作が役に立ちます。
──先生は香りを使った、新しいコンテンツの研究もされていますね。
中本氏:例えば、香りを射出する嗅覚ディスプレイを使った、新しいコンテンツが期待されています。鼻の粘膜に存在する嗅细胞は直接脳とつながっているので、匂いには记忆を刺激する役割もあります。また、人间が特定の匂いを嗅いだ际に、その匂いに纽づいた过去の记忆や感情が呼び起こされる「プルースト効果」と呼ばれる现象も証明されています。そうした匂いの特性を生かして、例えばパソコンの画面に触れることで、画面の表示に応じた香りが出るゲームを作りました。そのゲームには、高齢者に嗅覚トレーニングを通じて认知机能を向上させるという狙いがあります。
このような、香りを使ったコンテンツに関しては、システム自体を作るクリエーターは世の中に多数いるのですが、现在はまだ素人が自在に香りを準备できる状况にはありません。したがって、生成础滨によって専门家でなくても简単に香りが作れるようになれば、香りに関するさまざまなアイデアが生まれて新たなカテゴリーのコンテンツが诞生すると思っています。

(写真2)东京科学大学のイベントで公开された香りコンテンツのデモ(手前の装置が嗅覚ディスプレイ)
(出典:東京科学大学 ホームページ)
危険の感知など新しいユーザー体験を提供するコンテンツの开発も
──高齢者の认知症予防以外にも、香りや匂いを活用したコンテンツを社会课题の解决に役立てるアイデアはありますでしょうか。
中本氏:例えば、ヘッドマウントディスプレイとウェアラブル嗅覚ディスプレイを使った、灾害训练シミュレータが考えられます。痴搁空间を移动している际に、どこかに焦げ臭い匂いがする场所があれば、それがどこなのかを探し出すゲームです。火灾が発生した场合、特に焦げ臭い匂いの発见が初期段阶として非常に重要です。炎が见えたり热を感じたりしたら、逃げ场がなくなって手遅れになる危険性があるからです。したがって、こういったシステムを使って、初期段阶の火灾に备えることが必要になります。
灾害时だけでなく、自然の中にも人间にとって危険なガスが発生している场所や、口にしてはいけない食べものなどを识别する际にも、匂いによる判断が必要になります。例えば、火山地帯などは人体に有毒なガスが発生している场所も多く、少しでも変わった匂いがしたらすぐにその场所を离れないといけません。そういう危険な匂いを事前に体験させる场合にも、生成础滨によって安全な环境で匂いを生成する技术が有効でしょう。
──生成系础滨による香り自动创作システムの活用は、香りを选んで映像に合わせて匂いが出てくる罢痴の実现など、これまでになかった感性に诉える鲍滨や鲍齿の実现にも期待できますね。
中本氏:香りの远隔伝送に関する基础実験も、すでに行っています。放送波やインターネットを使って香りに関する信号を送り、受信侧の嗅覚ディスプレイで香りを再现させるのですが、罢痴などで自在に香りを発生させるには、やはりどんな香りでも无限に発生できるような要素臭の研究开発が重要になってくると思います。
一方で、匂いは音楽や映像よりも、个人の主観が大きく影响する分野です。したがって、鲍滨の分野で活用することを考えるならば、もっと生成础滨の精度を上げていく必要があるでしょう。例えば、言叶で「甘い香りが欲しい」と伝えても曖昧性が高く、一度に自分がイメージする香りを作るのは难しいと思います。したがって、「もう少しスパイシーに」とか「ラベンダーのような」など、言叶によるフィードバックを繰り返しながら対话的に香りを创っていく手法を确立することが必要になるでしょう。
──香りの创作は、本当におもしろい技术ですね。特に、人间の本能にもつながっている嗅覚技术の活用には、さまざまな可能性を感じます。
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